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「世羅のヤツ、遅いな。確か、面会は8時までですよね」 「さっき連絡があって、今、向かってるそうです。まだ30分ありますから、大丈夫ですよ」  シーツを被った外界で、直純とアンナの会話が聞こえる。  妙じゃねぇか。まるで世羅と3人、最初から待ち合わせていたみてぇだ。  顔合わせの後、アンナが持参したデカいゼリーをみんなで1つずつ食い、俺は更に夕飯も平らげた。味の薄い豆腐ハンバーグに、やたらとカラフルな温野菜サラダ。珍しく付いてきたデザートがマスカットゼリーだったのには、閉口した。一頻り笑った後で、アンナは病室に備え付けの小さな冷蔵庫に、間の悪いゼリーを閉じ込めてくれた。  いつもは、夕飯が終わると出勤するアンナが――今夜に限って、原田(マネージャー)に連絡を入れて、8時まで居ると言い出した。 「大丈夫なのかよ」 「いいの。直純さんに、よっちゃんのこと、もっと色々聞きたいもの」  実家が寺だってバレただけでもウンザリなのに――苦虫を100匹くらい噛み潰して、直純を睨んだ。 「あんま、つまんねぇこと喋んじゃねぇぞ」 「さて、どうでしょうか」  ベッドから少し離れた壁際に座っている弟は、涼しい顔で目を細めてみせた。 「チッ。勝手にしろ。俺ァ、寝る」  自分の話題が肴にされるるのは、勘弁して欲しい。俺はシーツを被って、狸寝入りを決め込んだ。
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