第一話

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第一話

暗い道にひとつぽつりとアオイライトが浮かぶ。木々が秋風にそよぎ、烏の飛び立つ音が響いた。そんな宵に少年は画面の中にいる。彼は勇者だった。不器用で魔法も使えず、剣ひとつで戦う。その熱い心と傷ついた体に世界中の子どもは憧れた。だが、画面の外の彼はただの少年であった。学校に行けば群れにそそくさと加わり、いつの間にか会話に入ってきているような、普通の中学生。 いつもの、淡々と練習をこなす部活を終え、友達とゲームだとか愚痴だとか軽く駄弁った後、「じゃあな」と当たり前のように、明日の再会を誓う。彼らと別れると、少年はズレてもいない鞄を肩に掛け直し、暗闇に歩いていった。スマホのライトと間隔の広い街灯だけが光る。 住宅街に入った。もうしばらくで家に到着だ。今日も一日終わったと、ひとつ大きく伸びをして、またスマホを見る。 どかっ、と肘に何かが当たった感触。倒れた音。ふと前を覗くと杖を持ったおばあさんが仰向けに倒れていた。 「すみません!大丈夫ですか!?」 返事がない。頭を打ったんだろうか。わけもわからず、とりあえず道の端に寄せようと持ち上げる。頭を支えた右手が濡れた。 少年はどうしていいかわからなかった。保健の授業は眠っていたから救助の方法もわからないし、何より、慌てた彼はスマホの存在をすっかり忘れていたのだ。人通りは少ない。が、幸い家は周囲にたくさんあった。少年は目の前の家へ走った。
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