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見た目こそ派手になったが彼女中身は昔のままで、当時の担任の話やクラスの話題で盛り上がった。
あの頃の桶谷は教室に花を持ってきて花瓶に活けたり水を換えたりしていた。それを遠くから眺めるのが俺の日課だった。
その話をすると桶谷が『見られてるなんて思わなかった!』と顔を真っ赤にした。
「ごめん、こっそり見てたなんて気持ち悪いよな。なんか目に入ってきたからつい……」
焦って言い訳する俺に『ううん、私変な顔してたかもって思って恥ずかしくなっただけで、気持ち悪いなんて全然思ってないよ!』とすかさずフォローしてくれる。
可愛い。ギャルの桶谷もいいけど、あの頃のままの桶谷も最高!
なんとなくいい感じの雰囲気でもしかしてワンチャンあるのでは? と思い始めた頃、桶谷が『実はね』と上目遣いで俺を見た。
「……私、新田くんに片想いしてたんだ」
つ、ついに……キタァーーーー!
「桶谷が、俺に?」
頭の中で狂喜乱舞する俺がわっせいわっせいと阿波踊りしていたが、表面上は冷静沈着を装う。
「……うん。新田くんは野球部でも活躍していたし本当に雲の上の存在だった。卒業式の時、別々の学校になっちゃうから思い切って告白しようと思ってたんだけど。やっぱり言えなかった」
ファーーーー!(興奮&混乱)
アオハルか! 俺アオハルのイケメン主人公かッ!
「……さすがに“雲の上”は言い過ぎだろ。阿部とか藤本の方が活躍してたし、俺自身女子に嫌われてると思ってたんだぜ?」
「まさか! 新田くん凄い人気だったしバレンタインデー前になると新田くんにあげるかどうかで他の子たちが牽制し合ってたぐらいだもん!
……私も新田くんにチョコ作ってたんだけど、結局渡せなくて自分で食べちゃった」
なにそのドラマみたいな話は! 本当にそれ俺? ドッキリか? いやこの際ドッキリでもいい! 今だけでもモテ男の気分を味わいたい。
「残念。今まで女子から何か貰った事ねぇし桶谷からチョコ貰えてたら一生の宝物にしてたよ」
「……えっ?」
戸惑った顔で固まる桶谷。
やばい。調子に乗って変な事言っちまったかも。
“一生の宝物“はちょっと言い過ぎだよな。
「新田くん、誰からもチョコ貰ってないの?」
「え? あぁ、実はオカーー母親以外からは貰った事ないんだ」
照れながらそう話すと、桶谷はバッチリメイクを施した眉尻を下げて『……でもミカちゃんとユウナちゃんは“綾瀬くん”に渡してもらうように頼んでたよ? そんなはずないんだけどな』と呟いた。
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