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「ごめん、電話だ。ちょっと出るね」
いそいそとスマホをスワイプさせて通話する桶谷。
「もしもしー? りゅーたん? えっもう終わったの? みゆみゆはまだコンビニ! さっき偶然同級生に会って話し込んでてさ……うん、うん。やだぁ〜そんなんじゃないよ。みゆみゆ絶対浮気とかしないし。それにりゅーたんが1番カッコイイもん!」
桶谷のキャピキャピした声に俺は“あ、これ絶対男だ“と気付いてしまい昂ぶった感情が一気に萎えた。
「うん、うん、わかったぁ。ここで待ってるね」
電話を終えた桶谷が『新田くんごめんね。あ、さっき言いかけた事って何?』と無邪気に聞いてきたが、失意の俺は『今後のGDP(国内総生産)を上げるにはどうすればいいと思う?』とテキトーな事を言って誤魔化した。
彼女はえっ? みたいな顔をしつつ『輸入に頼らず地産地消を意識していけば、生産率が上がるかも』と真面目に答えてくれて、謎の議論が白熱していく内に桶谷の彼氏登場!
俺よりもカッコイイと聞いてどんな奴かと思ったら、山奥で自給自足してます的なゴリゴリの縄文顔だった。
うん、桶谷の中の『カッコイイ』の基準はどうなってんの? 俺、口ひげ蓄えた奴と同列なの?
それでも『新田くん、彼は朱雀流星と言って私の彼氏なの』と紹介されていく内に何だか俺は父親の気分になってしまい『みゆみゆを幸せにしてやってくれ』と熱い握手を交わして颯爽とコンビニを去った。
ーーが、5分後にチョコ行方不明事件が迷宮入りのままだと気付く俺。
そして真相を探るべく牛乳片手に真緒の家に押しかけた。
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