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『オカン! 俺のチョコはどこ?』
帰宅早々オカンを壁ドンーーをせずに問い詰める。
ほぼ真緒と同じ反応のオカンに3分で説明すると、『食べたわよ』とアッサリ自白した。
「あ? 俺のチョコ何で勝手に食ってんだよ!」
「アンタおたふくで何も食べられなかったでしょ。手作りっぽいし傷む前に食べてあげたの」
「はぁ? 食う前にひとこと言えよ! 貰った事に気付けなくてお返しとかしてねぇし、とんだ悪人になっちまったじゃねぇか!」
「何言ってんの。バレンタインチョコなんてテッシュ配りのテッシュと一緒でしょ? ばら撒きたいから撒いてるだけで律儀にお返しする必要なんてないわよ」
なんだコイツ。人でなしじゃねぇか!
ドン引きする俺に『アンタもバレンタインデーの実態を知ればお返しが無意味だってわかるわよ』と言い訳してきた。
「私の経験上、チョコは撒き餌と同じよ。イベントにかこつけてばら撒くと、高価なお返しを貰えたり急にチヤホヤしてくれたりするから便利なのよね。
本当に好きな相手にはお返しとか関係なく毎年渡すし誕生日だって何かあげるわよ。そうじゃないなら、たまたまイベントに乗っかっただけで大した意味ないの。残念ね」
俺の希望を物の見事に打ち砕き『それでアンタに彼女はいるの?』と痛い所を突き、反応出来ずにいると『図体だけ立派になってもアンタはガキンチョのままね』と言い放った。
もう瀕死寸前のMy Heart……。
極めつけにドンッと出された晩飯はキュウリがぷかぷか浮いた闇鍋で『何ですか?』と訊ねると『アンタがさっさと牛乳買ってこないからこうなった』と責める始末。
“牛乳1本で解決するもんじゃないだろコレ“と言う言葉を必死に飲み込み、代わりに『太湖は?』と不在の弟を問うと『食欲ないみたいで部屋で寝てるわ』と母は物憂げな顔で溜め息をついた。
そりゃこんなん見たら誰でも食欲なくすわー。
しかしそこに気付くはずもなく『たいちゃん、最近変なのよ。ずっと変な本読んでるし、コソコソ何かしてるの。アンタ、心当たりある?』と母。
いやいや、それは思春期ならではの反応でしょーが。
アンタ、すぐ俺の秘蔵本とか見つけ出して机に置くから太湖も困ってんだよ。ーーと脳に直接語りかける俺。
もっと俺に太湖ぐらい心配してくれよと母に念を込めつつ、未知の味がする晩飯を無理やり消化した。
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