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部屋に戻るとちょうど弟が出てきた。
「今から風呂?」
声を掛けたが、弟はこちらを見ようともせず『あぁ』と言うだけ。
オカンの言う通り覇気がなく確かに様子がおかしい。
ここは兄貴らしく弟を元気付けようと『太湖、イイ物やるから後で見ろ』と秘蔵の【団地妻シリーズ】を差し出したらスパーンッと払い落とされてしまった。
「何すんだよ! もう絶版になってプレミア付いてる奴なんだぞ!」
「……知らねぇよ。気色悪いからそんなもん渡してくんな」
辛辣な言葉に愕然とする俺。
あれだけ懐いていた弟が物凄く冷たい。
それに俺の大好きな美熟女敏子さんシリーズを気色悪いだなんて……智樹、ショック!
「太湖! ちょっと兄ちゃんと話をしよう。お前、何か悩んでるのか? 悩みがあるなら俺に相談しろよ」
「……別に何もねぇし」
「嘘付け! お前暗い顔してるぞ。あ、もしかして恋の悩みとか? 好きな奴でも出来たのか? その子どんな子? 可愛いの?」
矢継ぎ早に質問すると太湖は母親譲りの切れ長の目を尖らせて『うるせぇな! 俺の事は放っとけよ!』とガチギレ。
え……そんな怒るような事言ったっけ? 反抗期って怖ぇー。
もしやと思い『お前はまだ15歳だし、彼女が居なくても普通だから全然気にすんな。童て……穢れなき男子である事を恥じなくてもいいんだ! もっと胸を張れ!』と、フォローしたら突然ガンッと壁を殴ったマイブラザー。
『黙れ。次何か言ったら泣かすぞ』
殺し屋みたいな目を向ける弟に心底ビビったが、太湖が童卒してない事を確認出来た俺はひどく安心した。
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