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薬を貰い風呂に入れてお粥まで食わせてやると真緒が『寝付くまで側にいて』と甘えてきた。
真緒の親はいつも忙しい。
彼らは愛情深い人たちではあるが職業上家庭を優先する事が出来ず、代わりに家政婦がやって来るが、彼女も高齢で最近は週一,ニ回来るのが精一杯だそうだ。
ふかふかのベッドで横たわるハニワ。
俺は近くのラグに座りうるさくない程度に小さくした音量で動物番組を見た。膝には猫の梅子が体を丸めて眠っている。
時折真緒の方に視線をやると、慌てたように顔を隠す。そしてまた俺がテレビの方を向くと顔を出す気配がするのだ。
「……お前、遊んでるだろ」
「だって智樹、CMになると振り向くから面白くなっちゃってさ」
「いや、さっさと寝ろよ。俺だってもう寝たいんだよ」
「じゃあさ、ここで寝る?」
「ここじゃ瞑想出来ないから無理」
「なにそれ。どうせエロい事でしょ?」
「お前なぁ、トップアスリートはみんな瞑想して寝るんだぞ? その言い草は失礼じゃないか!」
「……で、智樹はどんな瞑想するの?」
「まぁ、裸婦についてかな」
真緒はじっとりした視線を向けて『智樹の変態』とブツブツ文句を言ってくる。
お前も男だからわかるだろ? と言いたいがハニワに性欲とか不気味でしかないので、黙って梅子を撫でた。
「じゃ、そろそろ帰るわ」
「……えっもう帰るの? 寝付くまで居てよ」
上目遣い……かどうかは不明だが、俺を見上げ引き止めるように裾を掴む真緒。
「おい、ぶりっ子すんな。
一人寝が寂しいなら部屋から埴輪持ってきてやるからさ、それ抱いて寝ろよ。な?」
「……あんな不気味なのと寝れるわけないじゃん」
お前……それ最大のブーメランだぞ。つーか、四六時中一緒に居る俺の気持ちも考えろッ!
「真緒、そうやって男に甘えるから変な奴に執着されるんだよ。もうガキじゃねぇんだ。あの太湖ですら俺が添い寝してやるって言っても無言で閉め出すんだからな。アイツの自立心を見習え」
「……それ、単に太湖くんに嫌われてるからじゃない? そういえば最近全然見かけないね。元気にしてるの?」
「元気だけど元気じゃねぇな。部活で忙しそうだし。まぁ、そんなわけでバイチャ!」
長くなりそうな気配に俺は話を切り上げて真緒宅を退散!
そして魔除け代わりに玄関に埴輪のレプリカをこっそり置いていったのだが。
早朝、家政婦の悲鳴で警察沙汰になってしまった。
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