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薬が効いたのか俺のスペシャルお粥が良かったのか、真緒が元気になった。
さっそく昨日の動画を元に保健医を追放しようと提案したが、真緒は頑なに消して欲しいと訴える。
『こんな姿を人に見られたくない』
確かに嫌だろうなと思うが、これを見せなければ立証する事自体難しい。
色々持ちかけて説得を試みたが『誰かに見られるぐらいなら学校を辞める』とまで言われてしまった。
そんな時、またもや上げ下げメガネがやって来て『新田智樹、ちょっといいか?』と言うもんだから『良くねーよ!』と荒っぽく答えると風呂敷を持ったままわかりやすくビクつく遠藤。
「……すまん。取り込み中だったか?」
「……いや、別に」
「申し訳無い。……僕は空気を読むのが苦手でね。また後で出直すよ」
見るからにションボリした背中に慌てて用件を尋ねると『ぼたもちを持ってきたんだ』とメガネ。
「僕のおばあちゃんが新田に渡してくれと頼まれてな」
重箱にぎっしり詰まったぼたもち。
量も凄いがそれより優等生の遠藤が祖母ではなく“おばあちゃん”呼びする事が意外だった。
「おっ美味い。お前んちのばあちゃん、饅頭屋かなんかやってんのか?」
「……いや、お前の事を話したらおばあちゃんが大喜びして“ぜひお友だちと食べなさい”って作ったんだ。……少し多すぎたな。他の人にもあげるといい」
控え目に真緒の方を見る遠藤。
なんとなくだが、メガネには親しい友だちが居なかったんだろうなと思う。
不器用で堅苦しいがこういうタイプは嫌いじゃない。
「真緒も食え。めっちゃ美味いぞ。遠藤も座って一緒に食おう」
ぼたもち効果で不穏だった空気がほっこりし重箱が空になるまで食べた。
真緒も遠藤と普通に会話してなんとなく打ち解けた気がする。
その時、俺はひらめいた。遠藤がいれば動画を見せる事なく保健医を追放出来るのではないかとーー。
名付けて【優等生に証言してもらおうぜ大作戦】
真緒の許可を取り、かくかくしかじかで彼に伝えると『相分かった!(意訳:この僕に任せてごらんなさい! やっつけたるでぇ!)』と童貞検証以上にやる気を見せた。
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