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無事、個室から脱出した俺に幼馴染の真緒が藤堂から逃れるようにくっついてきた。
それを捨てられた子犬みたいな目で真緒をみつめる藤堂。
「真緒、さっきは乱暴にしてごめん。……もうしないから」
“俺から逃げないで”と切ない表情を浮かべている。
雰囲気的に藤堂が憐れに見えなくもないが、トイレに連れ込み下剤まで用意した時点でかなりの危険人物だ。俺が女ならいくらイケメンでも御免こうむる!
真緒もそう考えたのか奴から目を逸らし『行こう』と俺に促した。
藤堂は立ち尽くしたまま追ってこない。
そのまま教室に戻ると思いきや、真緒は階段にぺたんと座り『もううんざりだよ』と小さく呟いた。
「最初は普通だったのにいつもこうなっちゃうんだ。何でだろうね?」
俺に答えを求めるわけでもなく、自問自答するように『何もしてないのに』とボヤく真緒。
そして俺の方に向き直り『智樹だけは友だちのままでいて』と懇願してきた。
「もう智樹しか信頼できる人がいないんだ。
友だちも先生も親戚ですらみんな僕を押し倒そうとする。僕の気持ちを無視して好きだ、愛してると迫ってくる。
……藤堂くんは素っ気ない態度だったからやっと智樹以外の友だちが出来たと喜んでたのに……もう疲れちゃったよ」
声を震わせて今にも泣き出しそうな幼馴染を見て俺は複雑な気持ちを飲み込む。
なぁ、真緒。こんな事言ったらお前を傷付けるかもしれないけど、俺はもうお前をただの友だちだと思えないんだ。
誰よりも一緒にいたのに、お前を一番知ってるはずなのに、なぜか俺はお前をーーハニワにしか見えなくなってるんだーー。
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