2080人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前で震えている幼馴染に『お前、いつからハニワになった?』と訊けずにいる俺。
初めて真緒をハニワだと意識した時は慌てて眼科に飛び込んだ。
視力に問題がないとわかってからはお祓いをしたり魔除けのお守りを買い漁った。
自分以外全員真緒を“美少年”と評価したし、昔の俺も彼をハニワだと1ミリも思ってなかったから殊更不思議だった。
きっかけは何だったのか。
色白だった真緒が野球部に入り褐色の肌になったからだろうか?
高校に入り茶髪に染めたせいでどことなく埴輪のように見えてしまったのか。
それとも男を狂わせてしまう幼馴染と友だちでいる為に俺が真緒をハニワだと思うようになったのか。
理由がわからないが、とにかく真緒が茶色のハニワにしか見えず、黒目がちで惹き込まれそうな瞳だと名高い目もただの真っ黒な穴としか思えない。
幼馴染をハニワだと思う俺は頭がおかしくなったんじゃないかとずいぶん悩んだけれど、やたら男に迫られる真緒自身も奇妙だ。
もしかすると、これはハニワの呪いかもしれないと真剣に思い始めた俺は『お前、どっかの古墳で埴輪を持ち帰ったりした?』とさりげなく探ったり、埴輪の展覧会があれば必ず彼を誘い『何か感じる事はあるか?』と一つずつ埴輪を指差したりもした。
その結果、真緒に“筋金入りの埴輪オタク”と勘違いされた挙げ句誕生日に埴輪のレプリカを贈られ、時々ハニワの話を仕入れてくる始末。
もうハニワはお前でお腹いっぱいだよとも言えず、部屋に鎮座する埴輪のせいで俺は毎晩うなされていた。
最初のコメントを投稿しよう!