2046人が本棚に入れています
本棚に追加
/134ページ
初めての相手が埴輪という悲劇。
妄想では素敵な女の子と、飾り付けられたロマンティックな部屋で、愛を誓うはずだった。
よりによって埴輪と、記憶もなく、あっさり貞操を奪われてしまうなんて……あまりにも不毛すぎる!
「真緒とはもう絶交だッ! 俺の秘密の花園を荒らした罪は重いんだからな! この人でなし! いや、ハニワでなし!」
「……ねぇ、さっきから何意味不明な事言ってんの? 智樹が“手押し相撲しよう”って言い出したんでしょ?」
「……は?」
「憶えてないの?“ハンデやるから全力で来い! 俺は親指だけで戦う!“とか言って、僕が思いっきり突き飛ばしたら“ワンモアチャンス!”って何度も向かってきたクセに」
「……手押し相撲を? 俺が?」
「他に誰がそんな事言い出すの? 智樹しかいないでしょ!」
え…………俺そんな事言ったかな……? 言いそうっちゃ言いそうだけど、全裸ではやらない気がする。
「本当に? 酔って意識がない俺にイタズラとか本当にしてないんだな? 奈良の大仏に誓えるか?」
「……人んちのタオルを褌にして騒ぐ智樹の動画ならあるけど?」
物的証拠を見せつけてくるハニワ。異様にハイテンションの俺が『裸と裸のぶつかり稽古♡』と飛び跳ねていた。うん、キツい。
「……つまりこの腰の痛みは手押し相撲のせいなんだな。理解した。あと、その動画はすぐ消してくれ」
純潔だった事にホッとしつつ、なぜ真緒が動画なんか撮っていたのか内心ビビる。
よく見れば真緒も由緒正しい埴輪フォルムだった。人間に置き換えれば、彼も一糸纏わぬ姿のまま俺と添い寝をしていた事になる。
「つーか何で真緒も裸なんだよ? 動画撮る余裕があるなら酔っ払って意識飛んでたわけじゃないだろ?」
最初のコメントを投稿しよう!