2048人が本棚に入れています
本棚に追加
/134ページ
※背後要注意(肌色・土器色有り〼)
『……それは、きっと、“恋”だよ』
と、他人に向けた話なら、俺はしたり顔でそうほざく。
昼ドラ・連ドラ・韓ドラをオカンと視聴し続けた結果、恋に発展しそうなフラグはピーンときた。
だがしかし、俺に向けた話を俺が『それ恋(略)』とか言っちゃったら、“じゃあどうすればいいの?“と聞かれ、確実に微妙な空気になるだろう。
ここはひとつ。それっぽい話で誤魔化すしかないな!
『真緒、それはきっと“お兄ちゃん取られたくない病”だよ』
「……は?」
訝しがる真緒を慈愛に満ちた目で見つめ、兄貴力全開で諭しにかかる。
「真緒はひとりっ子だからさ、俺を兄のように感じて太湖や遠藤に嫉妬してるんだよきっと。まぁ、俺からにじみ出る母性ならぬ兄性に真緒が甘えたくなるのも当然だ。だから“お兄ちゃん”を独り占めしたくて嫉妬しちゃう真緒の気持ち、ちゃんと受け止めてやるよ」
「いや、智樹何言ってんの?」
「恥ずかしがらなくてもいいんだよ真緒。俺も店で黒髪ロングメガネのお姉さんが妹っぽいギャルのワガママを笑顔で受け止めてるのを見て『お姉さまッ!』と甘えたくなったし。俺、本当は妹として生まれたかったんだよな。で、五歳ぐらい離れたお姉ちゃんと温泉入って『お姉ちゃん胸おっきい♡』とか言ってキャッキャウフフを楽しみたかったわ……。兄弟だとそんな風にならないし、そもそも太湖は俺と会話しない……」
言いながら、目から聖水が湧いた。ついでに鼻からも聖水。手頃なテッシュが無かったから真緒を抱き締め、巻き付けたシーツでそれを拭い取った。
「なっ……! 智樹?!」
「俺に甘えていいんだよ真緒。寂しくなったらハグしようぜ」
茶色の素焼きを胸に閉じ込めると、信楽焼のたぬきをハグしているような気持ちだ。正直抱き心地はあまり良くない。
真緒は突然のハグに驚いていたが、しばらくすると恐る恐る俺の腰に腕を伸ばした。
俺はそんな真緒が段々愛おしく感じて、頭をヨシヨシしたり子守唄を歌ってみたり、オトンが怪しいドールを愛でるようにハニワを撫でてみた。
『んっ……ともき……』
腕の中から熱っぽい声で俺を見上げるハニワ。
相変わらず虚無顔だけど、彼の吐息が妙になまめかしい。
アレレ、なんか、真緒の息荒くね? もしやこれ、変なツボ押しちゃった?
「ま、真緒くん、風邪引いちゃうから服着てそろそろ寝よっか! 俺はマイ枕じゃないと首痛めるし、家でーー」
「ううん、気を遣わなくても大丈夫。……智樹になら……僕を好きにしても、いいよ」
焼き物の手をモジモジさせて、とんでもない事を言い出すハニワ。
ハートウォーミングな感じで抱き締めたつもりが、オトン流の撫で方を真似したせいで、変な展開になってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!