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再びベッドに横たわると、『智樹にこんな事頼んでしまってごめん』と申し訳なさそうに呟いた。
「智樹はロマンチストだから、こんなカタチで“初体験”を済ませるなんて嫌だよね。……本当にごめんなさい」
ぽつりぽつりと漏らす言葉を、胸が締め付けられる思いで聞いていた。
“男の体に抵抗あるなら目を閉じてて。……出来るだけ声も我慢する”
“智樹の好きな音楽でもかける? 必要ならヘッドホンとか持ってくるよ”
真緒自身、やりたくてやろうとしているわけじゃないのに、俺に気を遣ってばかりいるのがやるせない。
俺を選んだのも単なる消去法で、真緒なりの悪あがきだろう。
望まぬまま奪われる前に、“せめて自分の意思で相手を選びたい”という切なる願いだ。
欲望をぶち撒ける野郎どもは、彼の苦しみも覚悟も何一つ理解しちゃいない。
【愛している】の台詞を免罪符にすれば、真緒を好きにしていいと勘違いしている。
くそったれ! そんなに真緒とやりたきゃ自分が抱かれる側になれっつーの!
「あーー! なんか腹立ってきた! 真緒、この際思いっきりロマンティックな事しようぜ! 胸キュンドキドキのスイートなヤツ! 俺、そういうのないか調べるからお前はアロマキャンドル的な小道具探し出して、部屋を幻想的に演出してくれ!」
突然まくし立てる俺に、真緒は『急にどうしたの?』と面食らった様子だ。
「どうしたもこうもねぇよ! さっきから悲痛な事ばっか言って、余計虚しくなるだろ。
どうせやるなら楽しもうぜ。素敵な想い出にしてさ。
じゃ、どっちが先にロマンティックに出来るか勝負だ!」
名付けて【ロマンティックあげるよ大作戦!】
戸惑う真緒をお構いなしに、さっそく部屋を物色した。
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