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※背後前後要注意(電車内・家族団欒中は危険)
十五分後、俺はティッシュでペーパーフラワーを量産し、ベッドサイドの壁に飾り付けた。
これだけで非日常感がかなり増す。まぁ、若干お誕生会っぽい気も否めないが。
一方真緒は、『アロマキャンドルが無かったからこれでもいい?』と仏壇用のロウソクを持ってきた。
“何も無いよりマシかな“と思ったものの、ずらりと並べられたロウソクは、ロマンティックというより怪談が始まりそうな雰囲気で、そのひとつひとつに火を灯す埴輪はまさに百物語の怪奇現象だ。
ーーそして、なぜか奇妙な格好をしている真緒。
「……なぁ、そのピンク色のヤツ、どうしたの?」
すると彼はピンクのピラピラをスカートの裾を持つようにたくし上げ、『お母さんのネグリジェだけど、どうかな?』と感想を求めてきた。
「智樹は年上好きだし、こういうの着た方が雰囲気出るかなと思って……。変?」
ちょっぴり照れながら首をぐねり曲げるハニワ。
気持ちは嬉しいが、ネグリジェを着た埴輪なんぞ、あまりにも滑稽で、何とか“ありのままの真緒がいい”と答えたが『じゃあ、智樹が脱がせてくれる?』と意味不明な事を言い出し、俺は“顔見知りのおばさんのネグリジェを着た埴輪をゆっくり脱がしていく“という、謎プレイを体験した。うん、性欲減退。
「……始めよっか?」
始められません。
「真緒ごめん、一回動画とか観ていい? こう、盛り上げる為にも必要だし……」
「うん分かった。僕も“ちゃんとしたやり方“をおさらいしたいし、一緒に観よう」
そう言うなり彼はタブレット端末を取り出し、何やら操作すると、とんでもない映像を大画面テレビに映し出した。
画面いっぱいに広がる外国産マッチョ。ボールペンをストック出来そうな胸毛のゴリラと、やけにつるつる美肌のマッチョが『C'MON!』とぶつかり稽古の真っ最中だった。
「あ、ちょっと待って。最初からに戻すね」
ギョッとするでもなく、さらりとスタート地点に戻すハニワ。俺はこの温度差に戸惑いを隠せない。
「いやいやいや、お前、何で普通なんだよ! てか、おさらいって何? お前、このどぎついヤツ観たことあんの?!」
「あるよ」
「は? 何でだよ!」
「……最悪の事態になった時、どんな事するのか知っておこうと思って観た」
Oh……めちゃくちゃヘビーな理由やんけ。
「あー……いや、なるほど。分かった。でも、出来れば男同士のじゃなくて、美熟女的なヤツを観て高ぶらせたいんだけど……」
「ん。これ観終わってからならいいよ」
○
観終わる前にダウンした。
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