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『智樹、大丈夫?』
目を開けると頭に濡れタオルが乗せられていた。
どうやら俺は、あまりにも激しいシーンに意識が飛んでしまったらしい。
「……真緒……お前すげぇな。マジ勇者だわ」
恐ろしい映像に気絶する事なく平然と受け止められる彼が凄い。
「顔色悪いけど、吐きそう? トイレに行く?」
「……大丈夫。でも、あの領域は俺にはまだ早いと思う」
血管に注射針を刺すのも見れない俺が、真緒にあんな事出来るはずがない。
そもそも穢れなき男子でいるのもビビリな性格のせいだ。女子相手でも怖い。
『じゃ、他の動画にするね。どんなのがいい?』とさっそく次を提案してくるハニワ。
おい、もう勘弁してくれ。俺の繊細なハートを壊す気か! ……って叫びたいけど、痛くて辛い思いすんのは真緒の方だしなぁ。もうちょっと頑張って観よう。
「……出来るだけボカシてて、マッチョ以外のソフトなヤツでお願いします」
「オッケー。これなんてどう?」
ーーだが、二作目も途中で戦線離脱。
実写は無理だと判断した真緒がエロアニメに切り替えたにもかかわらず、やたらリアルな描写と中世の拷問を彷彿させる内容に、心が死んだ。
「……なんか、泣きそうな顔してるけど大丈夫?」
「……夢に出そう……」
「うん。アニメだと思って安心してたのに結構グロかったね」
ケロッとした感じで『智樹は血が出る系ダメだね』と言うが、逆にお前は何で平気なの?! と激しく問いたい。
とりあえず分かった事は、真緒とのフュージョンは無理。俺が泣く。
しかし真緒は『これなら智樹も大丈夫そうだよ?』と言いながら、明らかにヤバそうな動画を見せてくる。
そういやコイツ、ゾンビ系無理だって言ってるのにホラーゲームをわざわざ持って来るような奴だった。今も面白がってるに違いない。
「悪いけどさ、ロマンティック大作戦は中止して別のやり方を考えようぜ」
「……どういう事?」
「動画観た結果、どう考えても出来ねぇわ。それよりロクデナシからお前を守る方が確実だ。これからはお前から目を離さないし、真緒が俺んちに住めば離れる事もないだろ? これでまるっと解決だ!」
「……無理だよ」
「何でだよ? 四六時中俺と一緒ならさすがに狙われねえって! オトンは筋金入りのロリコンだし、太湖は嫌がる相手に無理やり迫るような男じゃないから新田家は安全だぜ?」
我ながら名案だと思ったのに、真緒は『それだと解決策にはならない』と賛同しなかった。
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