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これ以上の良案があるとでもいうのか。
ムッとして『俺がお前を抱く話よりよっぽどマトモな解決策だろ』と強い語気で責めると、悲しそうに俯く真緒。
「……智樹の案を否定つもりはないよ。むしろそこまで考えてくれてた事が凄く嬉しい。……でも」
彼は一旦言葉を切り、足元のクッションを拾い上げると、ぎゅっと抱き締めた。
「……その案は結果的に智樹を不幸にしてしまうからダメなんだ」
「は? どういう意味だよ?」
ドラマみたいな台詞を重々しい空気で吐き出されたが、さっきのどぎつい映像や、初体験が埴輪になる方が俺的にはかなり不幸。
口に納豆でも仕込んでんのかと思うようなキスや、野太い嬌声も演出上ある意味仕方がないが、体液を俺んちの定番食品で表現すんのはマジ勘弁してくれ。太湖なんか毎朝流し込むようにバナナと食ってんのに、今後どういう気持ちでそれを見りゃいいんだよ。動画視聴で既に俺の不幸レベルMAXだわ。
そんな気持ちも露知らず、『ずっと僕と一緒にいるなんて到底無理だよ』と首を振るハニワ。
「お前と一緒にいるだけなら全く問題ねぇけど」
「それは智樹が“少しの期間だけ”と思ってるからでしょ? 僕を守る為にこの先何十年も自分の時間を犠牲に出来る? 単なる“幼馴染”の関係でさ」
何十年先ーーはさすがに想定外だったけど、今まで一緒にいたんだ。未来だってきっと大丈夫だろう。
「出来るよ。お前と一緒にいるの、嫌じゃないし」
「ううん、僕は嫌。こんな“呪い”みたいな事で智樹の人生を縛り付けたくない。
……いつか智樹にお荷物だと思われるぐらいなら、何処かに消えた方がマシだ」
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