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翌日、真緒は体調を崩し学校を休んだ。
いつもなら真緒信者が俺に絡みヤイヤイ煩いのだが、今日は平穏に過ごせている。
しかし真緒がいないと途端にボッチになる俺。
昔はそれなりに友だちが居たけれど、彼らが真緒に狂い出すと俺を目の敵にするようになり、気が付いたらみんな離れて行った。
まぁ、その程度の関係だったと割り切りはしたが寂しい事には変わりない。
弁当を食い終わり時間を持て余した俺は出来るだけエロい本を探しに図書室へと向かった。
○
『君は新田智樹だね?』
エロ本探しに没頭していると、突然優等生っぽい奴が話し掛けてきた。
やたら指でメガネをクイッとする神経質そうな男に『アンタは誰?』と返す。
「ぼ、僕は遠藤修司。き、君に聞きたいことがある」
ワンフレーズ喋るだけで5回もクイッとした遠藤がどもりながらも偉そうに胸を反った。
「何?」
「……綾瀬真緒についてだが、君はーー」
「付き合ってない。真緒とはただの幼馴染だ」
百万遍繰り返された質問にうんざりしながら答えると『聞きたいことはそれじゃない』とメガネが怒った。
「質問は最後まで聞くように。君は早押しクイズでポカするタイプだな。テストでも失敗するぞ。
はっきり言うが、僕は他の奴らと違い綾瀬真緒をそういう目で見ていない。……おそらく君もそうなんだろ?だから君に声を掛けたんだ」
「はぁ……。じゃあ何だよ?」
やたらメガネを上げ下げする男に呆れつつ、その先を促すと奴は言い難そうに『君には綾瀬真緒がどう映っている?』と呟いた。
「どういう意味?」
「その、彼を……ちょっと待ってくれ」
気を落ち着けようとする時の癖なのか、コントみたいな黒縁メガネを外し奴は丁寧にレンズを拭く。
その横顔がとんでもない美形だったから『もっとマシなメガネにしろよ!』とツッコミたくなったが、イケメン嫌いな俺はあえて黙っていた。
「待たせてすまない。……それでさっきの話だが、君は綾瀬真緒を……人ならざる者に見えるか?」
メガネの真意に気付きハッと顔を上げる。
「……やはり、君もそうなのか? 綾瀬真緒を人ではなくーー」
「待った! どうせなら同時に言おう! 行くぞ、一斉の~で」
「ハニワだ!」「遮光器土偶だ」
!?
「埴輪……?」
「お前は遮光器土偶に見えてんのかよ!」
「いや、でも同じようなものだろ」
「全然ちげえよ! いいか、埴輪は王が死んだ時に人の代わりに埋葬する為の副葬品で土偶は飾ったり崇拝したりする為に作られたんだよ! そもそも時代が違うだろーが!」
妙に詳しくなってしまった俺は激しく抗議したが、メガネはそれを軽く受け流し『なぜ僕と君だけが彼を焼き物に見えるのだろうか?』と不思議そうに唸った。
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