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遠藤はこの謎を解き明かそうと一生懸命だった。
ポケットからメモ帳を取り出しあらゆる仮説を立てて俺に意見を求める。
・いつから人に見えなくなったのか?
・その前後で何か変わった事をしたか?
・真緒以外に埴輪や土偶に見える人物はいるか?
・不思議な現象など体験したか?
議論に煮詰まると今度は“我々の共通点を探そう“と言い出す始末。
生年月日や星座血液型好きな食べ物嫌いな食べ物など色々言い合った結果、最終的に見つけた共通点は【童貞】という事のみ。
「ふむ、非科学的だが童貞にしか見えない呪いみたいなものだろうか?」
「いや、絶対違うだろ。そんな奴いっぱいいるだろうし、もっと他の理由なんじゃねぇの?」
「なるほど。では検証してみるか?」
俺が“穢れなき男子”と知った遠藤は急に上から目線になりどもらなくなった。それが物凄く腹が立つ。
遠藤は奥に座っていた小柄で気弱そうな男に近寄り『つかぬことを聞くが、女性経験はあるのか?』と質問。
「えっ何ですかいきなり!」
戸惑う小柄な男に『答えろよ』と俺も詰め寄る。
そいつは俺を見て怯えながらも『あります』と言った。
「あ? 嘘付くなよ。お前は絶対童貞だろ」
「ほ、本当です!」
「だったらどんなシチュエーションで卒業したのか言ってみろ」
「えっあの、高校受験に合格した時に、家庭教師のななこ先生がご褒美にって僕の部屋で色々やってくれて……無事、中学と同時に童貞を卒業しました」
「嘘付くな! そんな夢みたいな出来事が現実にあるはずないだろ! 妄想を語るな! お前は絶対童貞だ!」
「……新田、少し落ち着け。怯えさせてどうする。
すまない、質問を変えよう。君は綾瀬真緒を知っているか? 知っているなら彼がどんな風に見えるのか教えてほしい」
「見えるってどういう意味ですか?」
「彼に対する印象でいいんだ。……人に見えるか?」
「人……というよりもう女神の域ですよね。あんな綺麗な人が現実にいるんだって本当衝撃でした。……未だに男だという事が信じられないです」
うっとりとした目で真緒の姿を語る小柄な男。
どうやらガチで卒業していたらしい。俺はショックでうなだれた。
「ありがとう。妙な質問をしてすまなかった。新田、これで童貞説が強まったな。おい、どうした? なぜそんなにショックを受けている?」
「あんな奴でも卒業してんのに何で俺は出来ないんだ……」
「お前ならいつでも卒業出来るだろ? 選り好みし過ぎなだけじゃないのか?」
「選り好みなんかしてねーよ。てか、モテねぇんだよ。言わせんな」
「そんな事ないだろ。お前は綾瀬真緒と同じぐらい有名だぞ? まあ、それはともかく、この検証の続きは放課後にしよう。ではまた後でな」
遠藤は楽しそうに図書室を出ていったが、俺はどっと疲れてそのまま早退。
“童貞説の検証なんぞ誰がやるか!”とふて寝した。
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