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家でゴロゴロしていると『暇なら牛乳買って来て。お釣りはアンタにあげるから』とオカンにおつかいを頼まれてしまった。
1本180円前後の牛乳に200円しか渡さないとかどんだけケチなんだよ! あと、鍋にサンマとキュウリをブチ込んでたけど、何作ってんのそれ?
色んな思いを飲み込み大人しくコンビニに向かう。
オカンを怒らせてしまったら、1週間はモヤシ弁当になるので口答えできない立場の俺。
おつかいついでに最新号でも立ち読みしようと思ったが、ふと【人妻美熟女の温泉事件簿】という非常に興味深い文献が目に止まったのでぜひ拝見しようと手を伸ばした瞬間。
『新田くん?』
派手めのギャルが俺の名を呼んだ。
「やっぱり! 新田くんだ!」
見知らぬギャルが近寄ってくる。俺は急いで経済雑誌を掴み、何食わぬ顔で『誰?』と尋ねた。
「あ、わかんないか。私、桶谷美優! 中学校の時新田くんと一緒のクラスだったんだけど、覚えてないかな?」
おけたに……おけたに……えっ? あの大人しい桶谷か?
「もしかして環境委員だった桶谷?」
「そう! 覚えてくれてたんだ! めっちゃ嬉しい!」
桶谷がぴょんっと飛び跳ねた。その仕草がめちゃんこ可愛くてドキマギする。
「桶谷、雰囲気変わったな」
「うん。うちの学校派手な子多いから同じようにしないと浮いちゃうの。だから私は“偽ギャル”なんだよね〜」
濃いアイラインを引いた桶谷が自虐的に呟く。
「……新田くんはこういう見た目の子あんまり好きじゃないよね? ごめんね、なんか、テンション上がってつい話し掛けちゃった」
“じゃあね”と言い出しそうな空気に慌てて首を振る。
もっと桶谷と話したいのにヘタレな俺は気の利いた言葉が浮かばず、こういう時、どうしたらいいのかわからない。
「……いや、俺は大人しかった桶谷が高校でも上手くやってるようで安心したし、近況聞けて良かった」
言いながら『俺は桶谷の担任か』と心の中で突っ込む。
そんな間抜けな言葉にも桶谷は嬉しそうにしてくれて、『新田くんさえ良ければもう少し話さない?』とイートインスペースを指差した。
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