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※迫り来る埴輪に注意
『……智樹、力抜いて。大丈夫だから』
○
ハニワ、イケメンモード覚醒!
『僕がリードする』と宣言した後、俺をベッドに押し倒し、おかしなセリフを吐く真緒。
『……怖がらなくても大丈夫。優しくするよ』
髪を撫でられ、耳元で甘く囁く声は、幼馴染の初めて知る“男”の部分だった。
「あ、あの真緒さん? まさか真緒さんが俺を抱くカンジ? えっウソ真緒さんの聖剣発動? いやぁ〜申し訳無いけど、自分的には用法・用量を守って正しく使いたい派だから、こう、男同士でなんやかんやはボディタッチが限界で……」
ふっ……と息を吹きかけられた(ような気がする)
視覚的にはただの茶色い出土品があるだけ。しかし人の吐息がかかり、首筋が妙にゾワゾワする。
「真緒ッ……マジでダメだって! 俺、こういうの慣れてなくて……あっ……噛んだ!? 今俺の頸動脈噛んだだろ? お前、無害な置物みたいな顔して歯あったんかい!」
「智樹少し黙って。……大人しくしたら気持ち良い事してあげる」
「えっマッサージ? じゃあ肩を重点的にお願いしまーーうわっ真緒、どこ触ってんだ! 変な撫で方すんなよ!」
焼き物の手が鎖骨をなぞり、ゆっくり下に向かっていく。普段真緒に触れる時とは違い、滑るように動かすそれは、土器の感触ではなかった。
「真緒もう止めろ! なんか気持ち悪い」
「もう少しで気持ち良くなるから我慢して」
「ならんわ!」
「なるはずだよ。“みんな”そう言って僕に同じ事してきたから」
「!」
思わず真緒を見上げたが、相変わらず表情が読めない虚無顔。
「智樹より色々知ってるよ。どこをどうすれば反応するかなんて嫌になるほど経験したし。……あ、でも智樹には痛がる事はしないから。……その役割は僕が引き受けるから安心して」
「あほか! 真緒が痛がる事は俺もしたくねぇよ。だからもう止めーー」
「今、智樹がしなくても、どうせ他の誰かがしてくるのに?」
ふいに更衣室の出来事が脳裏に蘇った。
そうだ。真緒はいつも誰かに狙われている。
『……乱暴に傷付けられる前に、幸せな記憶を刻みつけてよ』
淡々と話す真緒の言葉がどうしようもなく哀しくて。
ただ黙って頷くしかなかった。
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