血の砂金

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血の砂金

 私は母の話を信じていなかった。  私は今、それを後悔している。  母が言った。 「あなたの血には砂金が混じってるの」  初めてその話を聞いたのは小学生の頃。何年生だったかは覚えていない。これだけよく覚えてるのだから高学年だったと思う。  突然改まって何を言い出すかと思えば “血に砂金が混じってる” だ。私は子供ながらにぞっとした。母から告げられた私の特異体質に、ではない。突拍子もないことを真剣に言ってのける母にぞっとしたのだ。 「私がそうなのよ。私の母もそうだった。だからきっと、あなたの血にも砂金が混じってる」  母は一人で私を産んだ。結婚もしていない。検診も受けず、病院へも行かず。それは砂金が混じっているからだと言う。だから私には母子手帳というものが無かった。  母は人が信じられない。    それでも母は、たった一人で大切に私を育ててくれた。一滴の血も流れないよう、大切に、大切に。
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