お便りの時間です

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 「食費だけで五千レグス消費」  「だから心配すんなって。下水処理のバイトすれば元はとれるだろう」  デュランドは笑いながら、珈琲を啜る。  下水に棲むスライムという魔物は、取り込んだものを即座に消化する特性を持つが、例外として金属は消化できないため、鎧や武器や金銭だけは体内に残る。 一体当たり百レグスを越える大金を腹に溜め込んでいるものもおり、下水道のスライムを全て倒せば一万は軽く越えるレグスが手に入る。同時に台所やトイレの詰まりも解消できるのでウェールドでは人気のバイトである。  「アグリス、下水道行くときは消臭魔法かけてくれよな」  「わたしの魔法は芳香剤じゃないんだけど。わたしにも賢者になるって目標があるのよ。勇者パーティーの体臭をごまかすのは賢者の仕事じゃないのよ。お便りで忙しいんだから」  アグリスはウェールドの住民から預かった手紙の束をテーブルの上にどんと置いた。 ウェールドの住民の疑問や、悩みなどの相談ごとが書いてあり、民の声を聞き、民の声に答え、解決に導くことが賢者への第一歩だとウェールド魔術ギルドの師匠からことずかっている。
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