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「もう一度。リリー、もう一度言って?」
ロウの片手が頬に伸びてくる。髪の中に差し込まれ、親指の腹が耳たぶを掠めるように何度も往復し、擽ったい。
「好きって、言って。俺の目を見て」
「……ロ、ロウが、好きよ。……好き」
恥ずかしい。間近に迫る顔に逸らしたくなる目を堪えた。揺らぐ赤茶のロウの瞳に移る自分は、情けないほど動揺を隠せていない。
「ここに、俺が触れるのを許してくれる?」
唇をなぞる指先。一度目は外された。今度はもう外す気はないとそう伝えてくる瞳に、ゆっくりと頷き返す。
怖くない。
この手もこの身体もこの心も、持ち主であるロウは絶対にわたしを傷付けないことを知っている。
近付く距離。重なる熱。触れ合い、離れ、また重ね合わせ、次第にその間隔が長くなっていく。
「少し、口を開けて。もう少し、奥に俺を迎え入れて欲しい」
望み通りに緩く開ければ、それを辿るようにして唇よりも柔らかな熱の弾力が差し込まれた。
驚いて逃げ腰になる身体をロウの温かな手に諌められる。大丈夫、大丈夫、とでも言うように、背や腰に伝わる大きな手がリズムよく這わされて、強張る身体を解きほぐす。
唇は唇で、許した熱の侵入は、わたしの舌に絡みつき、吸い、擦り合わせ、互いの唾液が交じる音を部屋の中に静かに響かせていた。
「これ、夢じゃないよね。リリーの心を俺は手に入れたって思っていいの?」
「疑り深いのね……まだ言い足りないのかしら。それとも、結婚すれば実感できる?」
このひと言は、ロウに火をつける結果になったようで。
それまで遠慮がちに出入りしていた舌先は、優しいけれど熱く激しさを増し、息が切れ切れになるほど責められた。
「はあ……ダメ。止まんない。もっとしたい。リリー、いい? もう少し、付き合える?」
「む、無、理……っんん」
「好き。愛してる。はあ……好き過ぎてどうにかなりそう……もう一生離さない。俺の愛は重いから覚悟してね、リリー」
それからの事はあまり記憶にない。
覚えているのは、壮絶な色気を放つロウの瞳と、愛の言葉と、熱に溶かされた身体に感じる愛しい温もりだけが、心の中に甘く浸透していた事実だけ……
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