君に捧げる贖罪

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伝える事は出来ない。 マリーにした事を思えば、与えた傷の深さを思えば、俺なんかが想いを告げていい立場ではない。 どうやっても消せないものを刻んでおきながら、愛を乞うなど……欲しいなど……そんなのはきっと、俺のわがままでしかない。 マリーが俺を捨てないのなら、捨てるしかない方向に持っていくべきだ。 膨れる想いが爆発する前に。 勝手な熱情を押し付ける前に。 俺自身の手で終わらせる。それが今、マリーにしてやれる精一杯の贖罪だった。 対面するのは二度目になる。 相変わらずの仏頂面だが、歓迎されても困るというものだ。 互いが会いたくないと思っているのは見ての通り、来た俺が言うのもなんだが、俺の表情も目の前の男とそう変わらないことを自覚している。 適当な挨拶を口にした後で本題を切り出した。 「あいつが俺の所に毎日来るのは、ロードフェルド公爵の意思でもあると考えていいんだな」 「……どう捉えようが貴方の自由だ」 「ふん。じゃあ、勝手に解釈させて貰おう。公爵はセレーナが俺に毒を盛るのを知っていたのだろう? 知っててそれを実行させた。酷い話だよな。そりゃあ多少の罪悪感も芽生えるってものだ」 「………」 「だんまりか……まぁいい。だが、公爵があいつを止めないのなら、俺は有難くその好意を受け取りたいと思う」 「……好意じゃない。リリーの意見を尊重したまでだ」 「俺にとったら理由は何でもいいさ。公爵が自ら隙を提供してくれたことに感謝している」 反応も動揺もない……か。 つまりロードフェルド公爵は、俺の気持ちに気付いてるってわけだ。
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