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それから程なくして、二人は結婚した。
公爵の妻への溺愛ぶりは今や社交界中、民衆にも広く知れ渡り、お似合いのおしどり夫婦だと噂になるぐらいのバカップルぶりを披露している。
子にも恵まれて、増えた家族と共に穏やかで愛の溢れた生活を手にしていた。
俺の妻だった時の悪しき噂と同一人物なのに、マリーは良妻賢母のように称えられ、社交界の華と称えられ、至極正当で真っ当な評価を受けている。
勝手なものだ。
相手が違えば、こうも真反対になるとは。
自分の取った態度によりマリーを悪妻へと貶めていたと、まざまざと見せつけられているようで胸が痛い。
だが、
もうマリーを苦しめるものはないのだろう。
ロードフェルド公爵がそれを全部払拭し、愛し守り抜いている。
俺が望んだ通りの未来を描くマリーを。
俺では与えてやる事の出来なかったものを、己の持てる全てを懸けて、ロードフェルド公爵はマリーに愛と共に捧げていた。
どんなに月日が流れても、俺がお前を忘れることはない。想いを手放すこともない。あれから何度も試しているが、お前以外の誰かを求めても上手く行かないんだ。切り離そうとしても、目を背けても、無駄だった。
だから足掻くのはやめた。
やめたら酷い渇望も欲望も同時に収まって、マリーへの想いがゆっくりと純粋なものに昇華していくのを感じた。
そこに辿り着くまで、10年もかかった歳月。
残された命の限り、俺はお前だけを見続けるのだろう。
幸せに彩られたマリーの笑顔に癒されて。
報われない想いを知りながら、一生を……
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