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ロードフェルド公爵夫人となったリリーは、自分の義兄となった人物がロウの幼馴染であり、友人であり、上司と部下の関係であることを知ったのは、結婚式を挙げた直後だった。
副隊長のニールは任務の為、リリーが養女になった時も婚約した時も遠い地におり、帰還した時にはもう、全てが終わった後だったのだ。
カルザー男爵よりロウと同い年の嫡男がいるとは聞いていたが、当のロウからはサラッとした上辺程度の情報しか聞いていない。
わたしが見知った相手の妹になる事を許してくれたことに、ロウの奥深い懐に入り込めた気がして嬉しくなる。
ニールの言を借りれば、ロウ自らが土下座して頼み込んで来たらしいが、たぶん誇張されているのだろう。そんな軽口を気さくに言い合える仲が羨ましいと思った。
わたしにはいない。親も兄弟も。戦災孤児となって生きることに必死過ぎて、友人を作るのもままならなかったから。
だから余計に思うのだ。
ロウの大切な友人である義兄ともっと仲良くなりたいと。
「リリーの料理はいつも最高だね。ずっと食べていたいよ」
「まぁ、お義兄様はお上手なんですね。こんなので良かったらいつでも歓迎します」
「えー、本当に? そんな事言ったら毎日来ちゃうよ」
「言わなくてもお前は毎日来るじゃないか」
仕事の件が済んだら途端に義兄は砕けた雰囲気を纏ってみせる。いつもならロウだって同じ感じなのに、今日のロウは少し様子がおかしかった。
仕事ばかりで疲れているのだろうか。いくら友人兼部下とは言え当たりが厳しいと思う。
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