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義兄が気を悪くしないよう普段より愛想を込めてお相手を務めていると、ロウの不機嫌がますます酷くなってしまった。
食後のお茶を用意するのも酒を酌み交わすのも全拒否するロウは、義兄に帰れ帰れと連呼している。
「ちょ、ルイス。あんまりじゃない」
「そうだ。たまには可愛らしくニールお義兄様と呼んでくれてもいいのに」
「気色悪いことを言うな。毎回毎回、仕事にかこつけて邪魔しに来やがる奴が何を言ってんだ」
「やだなぁ。誤解だよそれは。本当にたまたま立て続けに忘れてたってだけなのに」
「たまたまだと? 副隊長ともあろう者が、うっかりな物忘れで毎日仕事外に隊長の屋敷に来るか? 朝で事足りるだろう。リリー、ニールも仕事で疲れている。あまり引き止めてはいけないよ」
「疲れてないから気にすることないのに」
「お前は黙ってろ」
確かにロウの言うことはもっともだと思う。
緊急だとか早急にとか言う割に、義兄は夕食を食べて、しっかりと食後のお茶やお酒を嗜んで夜遅くまで居座り続けている。
もしかしたら、わたしがロウの子供時代の話をせがむから、ニールは優しさで無理して居てくれたのかもしれないのに。
なんて事だろう。
ロウと義兄は長い付き合いだ。わたしの分からない微妙な表情や態度で互いの言わんとする事が理解出来ていたらしい。
ロウが不機嫌だったのは、自分の友人の本音や体調を気遣わないわたしに怒っていたんだ。
ああ、やってしまった大失態に項垂れる。
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