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「リリーの考えてることは全く的外れだから気にしないでいいよ。けどまぁ、ちょっとからかい過ぎちゃったかな。ロウがリリーに当たり散らす前に僕は退散するよ」
「もう二度と来るな」
「心が狭いぞ。僕はリリーの兄だからね。いつでも会いに来る権利はあるんだよ。じゃあな」
義兄のハグを受け、親愛の印である頬へのキスはロウの胸に抱き込まれて阻止される。それに義兄は苦笑いだったけど、わたしは少しも笑えなかった。
ロウの手を振りほどき距離を取る。
義兄が部屋を出た今、二人きりの状況に居たたまれない。
「リリー?」
「ごめんなさい。わたしがもっと早く気付くべきでした。嫌な思いをさせてしまっ」
「ストップ。ちょっと待って。ニールも言っていたと思うけどリリーは何も悪くないからね」
「でも……」
「おいで。話をしよう。というか、もう俺は限界に近いかもしれない」
ピキリと凍り付く。
限界って何が限界なんだろう……理解したくないのに、義兄の親愛さえも受けさせて貰えなかった事実が鋭く胸を打つ。
気遣いの出来ないわたしが嫌になった?
話ってまさか離縁……嫌よ。聞きたくない。
伸びてきたロウの腕を躱し、逃げるように小走りで扉に向かえば、開ける前にロウが扉の前に立ちはだかる。
「どこへ行くつもりなの。まだ話は終わってないよ」
「だってロウが……」
「ルイスだ。で、俺が何? やっと久しぶりにニール抜きで話せるんだよ。ずっと我慢していた俺が簡単にリリーを逃すと思う?」
「我慢って……」
「そう。リリーに触れなきゃもうダメなの。限界だし死んじゃうよ。リリー欠乏症で」
「え?」
「ん?」
……どうやら勘違いだったらしい。
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