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ロウとの行為はまだ数える程度。
触れ合うことの恐怖が拭えないわたしに根気よく付き合い、優しく優しく抱いてくれた。
どう考えてもロウが満足するようなものになっているとは言えないのに、それでもロウは幸せだと言う。
肌を重ねるたびに無意識に震える身体。ロウ自身が傷付けるわけないと思っていても止まらない。繋がるまで長い時間をかけ、わたしの身体を溶かして開く作業は、愛の行為というよりセラピーに近い。
無理をさせている。
こんな女を抱いたって面白くもないだろう。
と、思っていた。今までは。
けれど真上の男は、ロウは、間違いなくわたしを求めている。抱きたいと、愛し合いたいと、真っ直ぐにわたしだけを乞うていた。
「ロ、ルイスの好きにしていいよ。ルイスになら何をされたって構わないから」
「いけないよリリー。そんな煽るような事を今の俺に言わないで。酷くしそうで怖い」
「うん。それでもいい。愛されてるって実感出来るもの。我慢はやめて」
受け止めてあげたい。
ロウの気持ちも想いも欲もありのまま。
わたしだけに与えられた権利から逃げたくない。古傷なんかに負けたくない。
「貴方の手で全部塗り替えて。忌まわしい記憶を幸せなものにして欲しいの」
「……分かった。でも怖かったら言って。すぐやめるから。俺は俺だけの欲をぶつけたいわけじゃないんだ。リリーと一緒に、同じ気持ちで愛し合いたい」
ロウの唇が身体に落とされる。
確かめるようなゆっくりとした動きは、どこまでもわたしの事を考えている。
もう震えはない。強張りもない。
あるのは、ロウがくれる心地良い甘美な熱情だけだった。
気付いたら朝を等に過ぎた昼間で、寝台のシーツの上で正座で項垂れるロウがいた。
「ごめん。調子に乗りました」
……うん。
ぶつけていいと言ったけど、朝方まで付き合わされるとは思ってもみなかった。はしたない声を上げ、何度も高みに登らされたことや自分の痴態を記憶している。
「次はお手柔らかにお願いします」
シーツの中で呟いた言葉はロウの腕の中に消えていた。
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