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わたしの嘘は簡単に見破れてしまった。
カレンさんに会いたかったのは本当だけど、それ以外の理由があることを見抜かれている。
「単にわたしが、狭量なのです」
ロウに話さず手紙を残すに至った経緯について話し、そう締めくくれば、カレンさんは驚愕のあまり固まってしまった。
「嘘だろ、あの堅物のロウが……」
青い顔をしてぶつぶつと呟く声は、落胆を通り越して信じ難い事を聞いてしまったような含みがある。
それもそうだろう。
カレンさんはずっと、ロウが女性に疎い生真面目な人だと思っていたのだから。
確かにわたしだって、一時期はそう思っていた。色恋沙汰から遠い位置にいるロウを心配したこともあったわけだし。
だけど、想いを告げられてからのロウの振る舞いを考えれば、そんなわけないのは分かり切っていた。ただそれを、意識しないようにしていただけで。
カレンさんに話して少しスッキリした。
後はロウに会う前に自分の気持ちに折り合いをつければいいと思っ
「カレンっ! リリーは、リリーは居るか?!」
いくらなんでも早過ぎる。
聞き慣れた声と同時に、慌ただしく部屋の扉をぶち開けたロウの姿に驚いた。
「リリー、あの手紙はどういう事だ!」
「……お早いお帰りだったんですね」
「いや……君が出て行ったと部下から報告を受けたんだ。で、ウチの優秀な執事がリリーの手紙を持って来てくれて……」
最後の方はしどろもどろに話され、なるほど、と納得する。ロウはわたしが男の暴力に晒され、かつオットー公爵にされた事を酷く気に病んでいた。
何かあってはいけないと、公爵家の警護を付けられていたのは知っているが、部下にまでさせていたとは初耳である。
「……里帰りしたかったんです」
「ここをそんな風に思ってくれて嬉しいよ。でもね、手紙じゃなくて直接言って欲しかったな。夫が妻の行き先を知らないなんて心配になるでしょ」
「……では、妻が夫のことを知らない場合はどうすればいいのです?」
ああダメだ。こんな嫌味な言い方をするつもりはなかったのに。
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