921人が本棚に入れています
本棚に追加
「無実だって分かってくれた?」
「……はい。ごめんなさい」
安心している場合じゃなかった。ロウに酷い態度を取ってしまった自分を恥じる。
「でもショックだなぁ、リリーは俺が愛人を持つ事を受け入れる気でいた事が」
「だって……」
嫌われたくない。駄々を捏ねて貴方に捨てられるぐらいなら、嫌でも良い妻となって我慢した方がまだマシだ。……ああやだな。これって、レイの時と同じ思考になっている。
「リリー、俺には自分の気持ちを誤魔化さないでいいんだよ。怒りも悲しみも全部受け止める。どんな君を曝け出したって構わないし、それを見たからと言って俺が君を嫌いになることは絶対にないからね」
「嘘だ……」
「嘘じゃないよ。こんな風に一人で考えて隠される方が嫌だ。前にも言ったでしょ」
うん。確かに言われた。頼れって。
でも難しいよ。好きな人に自分の嫌な面を見せるのは凄く勇気がいることだから。
「リリーは俺の愛を甘く見過ぎ。ぶっちゃけるとさ、リリーの目に移る男は俺だけでいいと思ってる。他の男と話すのも近付けるのも嫌だし、出来るものなら屋敷に一生リリーを閉じ込めておきたいって物騒な事をいつも考えている」
「それはちょっと……」
「考えているだけだ。実際にはしないよ。リリーの自由を奪うぐらいなら、俺以外の男を始末した方がいい」
そっちの方が物騒だと思う。
穏やかに笑うロウに引き攣る笑みを返せば、半分本気の冗談だよって返される。え、どっちなの?
「つまり俺は、リリー以外、目に入らないってことだよ。だからリリーも早く、俺の気持ちに追い付いて欲しい」
「わ、わたしもちゃんと想ってます。ロウが他の女性と話す度に嫉妬だってあ、あるし」
始末まではいかないにしても、ヤキモチは焼きまくっている。見せないだけで。
「やっぱりまだまだダメだな。三回も呼び名を間違えている。言えないなら言わせるまでだけど……どうする?」
ハッと気付いた時には遅かった。唇を寄せられて、抱き締められていた身体が倒される。
「だ、ダメ! か、カレンさんが……」
「気にしなくていいよ。カレンは気配りが出来るから部屋には来ないだろう」
「よ、夜じゃないしっ!」
窓から照り付ける日差し、その明るさを訴えながらロウの口付けを唇の端で受け止めた。舌が頬を擽り、耳を食み、暴れるわたしの力を易々と奪われる。
うーーん、逃げられない。
最初のコメントを投稿しよう!