921人が本棚に入れています
本棚に追加
「最近、カレンと仲良くしているそうだな」
一瞬、言葉に詰まってしまう。
夕食の用意をし終えたカレンさんが帰った後、いつものように二人で食後のお茶を飲んでいたら、唐突に言われてしまったから。
勝手なことをしていることがバレている。
怒られるのだろうか……と身を竦めた。
「責めているわけじゃない。ただ、その……カレンはお節介焼きだから、君が困ることを言ったりしてないか気になって聞いただけだ」
手伝いが気にいらない、というわけじゃないらしい。ロウはわたしの境遇を、知られたくない過去のせいで、嫌な思いをしていないかと気に掛けてくれているのだろう。
カレンさんはパワフルな人で、頼りになる存在だと答えておいた。まるで母のような、という言葉と、貴方とくっ付けようとしています、という言葉は心に秘めて。
時間制のおかげで、夜はこうして屋敷にロウと二人きりになる。
朝や昼は食事を共に出来ないから夕食と食後のお茶は一緒に、という謎のルールを作ったロウに従っているけれど。
これがカレンさんの勘違いを増長していることに、彼は気づいていない。
今日も帰りがけに「男は少々、強引に行かねばならない時があるんですよ」と、割と真剣な顔でカレンさん言われていたロウは、「?」って感じだったことが幸いだ。
ロウは良い人だ。ぶっきらぼうだけど、不器用なだけで本質は優しい。
顔も嫌いじゃない。黙っていると怖く見えるが、内面の温かさに触れた身としては、その相反する表情も彼の魅力の一部に思う。
だからこそ、だ。
ロウには素敵な女性と出会ってもらいたい。
間違ってもわたしのような、汚れ切った身体と、元夫に捨てられる性根を持った女などと、これ以上、仲を疑われるわけにはいかない。
最初のコメントを投稿しよう!