918人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
壊れゆく、堕ちていく
わたしは、過ちを犯した。
一度目の失敗は、自己陶酔の想いに囚われた事。
二度目の失敗は、あの時に死ななかった事。
三度目の失敗は、脅しに屈し、嘘を重ね、恥かしげもなく生きている事だ。
視界が揺れる。
自分の意思ではなく、強制的に続けられるものによって。
熱く、乱れた吐息が首に埋まる。
そこからねっとりと這い回る舌は、吸い上げ、音を立て、嬲り、荒ぶる情欲を無遠慮に押し付けてくる。
気持ち悪い。
心が、身体が、わたしの全てが拒否をするけれど、止める術もやめさせる術も持ち合わせていなかった。
「レイはバカだな。いくら君に興味がないとはいえ、こんな心地良い身体を抱かずに捨てるなんて」
散々、人の身体を弄んだくせに、まだ足りないのか。男が吐く言葉が秘めた古傷を鋭く抉る。
「君はもっとバカだよ。レイに相手にされなくて他の男に慰めを求めるなら、上手くやらなきゃ。噂が立つほどするなんて、よっぽど身体が寂しかったんだろうがな」
違う。何もかも間違っている。
悪意の塊のような、創作された噂を信じた者も、広めた者も、それに負けた自分自身も。
ロウの屋敷を抜け出して、こうして日中から男と交わる行為は、もう何度目になるのだろう。
『公爵にお前の本性をバラされたくなければ俺に従え』
そんなものは、どうだって良かった。
ロウに会う前からすでに地に落ちたものなど。
『従わないなら、違う噂を流してやろうか?
公爵は身分もない下賎な悪女に手玉に取られた、腑抜けでマヌケ野郎だってな』
最初のコメントを投稿しよう!