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死にたい。今すぐ消え去ってしまいたい。
心底嫌われている。
噂を噂のままに信じた元夫が、わたしに触れもせず他の女を身ごもらせた元夫が、今更抱いてくれるはずもないのに。
一瞬だろうが、そんなバカげたことを望んだ自分の愚かさが恥ずかしく、まだ懲りもせず愛を求める救いようのない性根は、オットー公爵に見透かされていた。
わざと聞いたのだ。
下品な物言いで、わたしに芽生えた歓喜の表情を見逃すことなく、地獄へと叩き付ける言葉をレイから引き出す為に。
オットー公爵は、わたしの身体も心も遊び終えて満足したのだろう。理由は知らない。話したいというレイの意向に沿って、オットー公爵は部屋を出て行った。
「早く服を着ろ。いつまで寝乱れた姿を晒すつもりだ。恥を知れ」
キツイ言葉が飛んで来る。
貴方にだけは言われたくない。契りを交わした仲で、ずっとずっと裏切っていたのはレイの方だ。
けれど、こんな自分の姿を見せておいて、貴方に捨てられなければ貞淑だったなど、どの口が言えというのだろう。
否定も弁解も意味はない。
今も昔もこれからも。
噂を確かな証拠として、こんな酷い再会を図ったのは他ならぬオットー公爵である。
戦う前から負けていた。
負けるように仕向けられていた。
精も根も尽きた抜けがらは、足掻く術もない。
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