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ふと、疑問が沸き起こる。
全てから助けたかった。守りたい。
何度も言われたその言葉を違えずに、今もこうして行動してくれるロウ。
……なぜ?
行き着いた感情に心が騒ついた。
嬉しいし有難いし感謝もしているけれど、途端に真意の見えないものに変質していく。
侍女ごとき、悪女、わたしという者を構成するのは、公爵が気にかけるに足らない惨めなものだ。
そもそも、最初からおかしい。
なぜ執事に頼んでまでわたしを救おうしたの?
なぜ来ないわたしを探してまで助けたの?
なぜこの屋敷に居て欲しいなんて言うの?
真綿で包むように、まるでわたしを大切なものかのように扱うのは、どうしてなのか。
次から次へと巡る考え。結論なんて出なかったけど……導き出した推測に突き動かされていた。
行くなと、ロウは言った。
許さないとも、言っていた。
けれど、止まらない。止めようがない。
レイは酷い男だ。
自らが手放した元妻に戻って来いと言う。愛情からではない。侍女にと、妻の座ではないものを望んだのだ。
見たくない。触りたくもない。出て行けと言っていたのにも関わらず。
オットー公爵との情事を見て噂を確かなものとしたはずなのに……それでもと。
自分をコケにした女を例え侍女でも望むのは、レイの性分からしてあり得なかった。
何かが起きている。
わたしの知らない何かが……
それをたぶん、ロウは知っている。
知ってて隠している、と思った。
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