熱き火花

6/9
前へ
/153ページ
次へ
ふと、疑問が沸き起こる。 全てから助けたかった。守りたい。 何度も言われたその言葉を違えずに、今もこうして行動してくれるロウ。 ……なぜ? 行き着いた感情に心が騒ついた。 嬉しいし有難いし感謝もしているけれど、途端に真意の見えないものに変質していく。 侍女ごとき、悪女、わたしという者を構成するのは、公爵が気にかけるに足らない惨めなものだ。 そもそも、最初からおかしい。 なぜ執事に頼んでまでわたしを救おうしたの? なぜ来ないわたしを探してまで助けたの? なぜこの屋敷に居て欲しいなんて言うの? 真綿で包むように、まるでわたしを大切なものかのように扱うのは、どうしてなのか。 次から次へと巡る考え。結論なんて出なかったけど……導き出した推測に突き動かされていた。 行くなと、ロウは言った。 許さないとも、言っていた。 けれど、止まらない。止めようがない。 レイは酷い男だ。 自らが手放した元妻に戻って来いと言う。愛情からではない。侍女にと、妻の座ではないものを望んだのだ。 見たくない。触りたくもない。出て行けと言っていたのにも関わらず。 オットー公爵との情事を見て噂を確かなものとしたはずなのに……それでもと。 自分をコケにした女を例え侍女でも望むのは、レイの性分からしてあり得なかった。 何かが起きている。 わたしの知らない何かが…… それをたぶん、ロウは知っている。 知ってて隠している、と思った。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

921人が本棚に入れています
本棚に追加