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わたしの勝手な行動は、ロウの心を酷く傷付けたらしい。
レイの所から戻って来て、カレンさんと料理を作っている最中に、突然、本当に容赦のない力でロウの私室に連れ込まれた。
「知らせを受けて急いで帰って来た。リリー、嘘だよね? 」
「……いえ、本当で……っ!」
言い終わらない内に、ガッと両肩を掴まれて、そのままの勢いで壁に背を打ち付ける。
……痛い。呻くわたしの真上から、もの凄い形相をしたロウが早口でまくし立てて来た。
「どうして英雄のとこなんかっ……俺は行くなって言ったよね? もう関わるべきじゃないとも言ったはずだ。それがなんでっ……リリーはやっぱり英雄がいいの? あんな酷い仕打ちをした男がまだ好きなのか? ダメだよ。彼にはもう妻がいる。どんなに想っても想い返してなんかくれないんだぞ!」
「……ロウ、痛いよ。離して……」
「っ、す、すまないっ」
身を捩れば、ハッとしたように肩にかかっていた圧力は離れていく。ばつの悪い表情で横を向いたロウに、聞こえない程度の小さな安堵を漏らした。
「わたしがレイのところに行ったのは、そういう感情じゃないのです。ですが、レイの希望は無理でも力になれそうな事はしたいと思いました」
「っリリー!!」
「カレンさんから聞きました。ロウは貴族を取り締まっていると……そしてそれはたぶん、レイの事も対象だったんじゃないでしょうか?」
無言は肯定だろう。
何も言わず押し黙るロウに、思い至った推測の続きを話す。
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