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首を突っ込むんじゃなかったな。
横からの視線も前からのレイの視線も痛すぎる。
「だったらいいけどね。せっかく具合が良くなってきたのに、冷たい事ばかり言われる身にもなってほしいわ」
「ドレスも宝石も腐るほどあるだろうが」
「あっても飽きるのよ。女は常に新しいものが必要なの。レイが勝手に減税しなければ、わたしがこんなに我慢することなかったのに……最低な気分だわ」
「セレーナ!」
「怒鳴らないで頂戴。もう部屋に戻るわ。……ねぇ、ローディ、送って下さらない?」
ひええ! 完全な誘いに唖然となる。
喧嘩もここまで来たら他人の入る余地はない。話を振られてしまったロウが気の毒だ。
「今はレイが許してくれないけど、近々、夜会を開こうと思ってますの。ローディ、貴方にも招待状を送るわね」
「ロードフェルドです。言っておきますが、貴女とそのような愛称で呼ばれる仲になるつもりも、部屋に送るつもりもありません。……当然、夜会の件も迷惑なだけで、貴女とは二度と会うこともないでしょう」
……バッサリ過ぎる。
言葉遣いは至極丁寧だけど、言ってる内容は取り付く島もないほど拒絶一色だった。
たぶん、初めての経験なのだろう。
見る見る内に、綺麗な顔に憤怒の色が浮かび、控えていた執事を呼び付けて部屋を出て行ってしまった。
「妻が迷惑をかけてすまない」
「英雄が謝る必要はありませんよ。奥方の人となりが分かって安堵した面もありますからね」
「……どういう意味だ」
「リリーとは似ても似つかぬ性格で良かったって話ですよ。貴方が話し合いなどとおっしゃるから、てっきりリリーに未練がおありなのかと思ったものでして」
「バカな……そんなはず、ないだろう」
「ええ。英雄の女の趣味を拝見させて頂きましたので、俺とは全く違うようで安心しました。ですが、ならばなぜ、引き止めるような真似をするのです? リリーは十分、貴方の力になったと思いますが」
「き、急だったからだ。それに……公爵に会わずに帰すなど失礼だろう」
「気にかけてくれたようで痛み入ります。では、もう会ったことですし、貴方の礼儀も受け取ったのでこれで失礼させて貰おう」
一方的に話を纏めて切り上げたロウに対し、今度ばかりはレイの止める声はなかった。
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