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疑心のち嫉妬のち後悔
マリーを目的の場所に置いた後、俺はすぐさま友人宅に戻り、問い詰めた。
どこでどのような経緯で出会い、マリーと関係を持つようになったのか、と。
洗いざらい全部聞き出して、一人の名前をしっかりと脳に焼き付ける。
……ロードフェルド公爵。
知らない男だ。
そいつが今、マリーを囲う張本人で、リリーという偽名を与えたらしい。
友人はただのつまみ食いだと自分を評したが、絶品で離したくないので、ロードフェルド公爵から奪う算段を付けていると得意げに言った。
噂とこの目で知った三度目の傷に、剣でも突き立てられた気分に陥る。
その場で斬り捨てることはなかったけれど、心の中では友人の頭と胴体は繋がっていない。二度とマリーに触れるなと忠告し、破ったら地獄の直行便に乗ることになるだろうと脅しを入れた。
英雄の本気を知った友人は、詮索することなく一にも二にもなく蒼白な顔で頷く。
この件に関しては他言もするなと念を押すことも忘れない。
俺のこの行動も思考も、俺自身でさえ分からない。確かに見たはずだ。噂通りのものを。
だけど、やはりマリーがあの目をしていたから。自らの意志で友人に身を委ねたとは思えなかった。
ただの気のせいかもしれない。
分からないという行動と思考が、知ってて知らないフリをしている自分の胸の内を誤魔化している。
答えはとっくの昔に出ていた。
けれど、それを明確にするつもりはない。
したとしても、四度目の傷を受けるだけなのは目に見えているのだから。
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