誕生日

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(凛side) 車のキーをテーブルに置き お客様からのプレゼントを ベッドの横に置いて 着替えて 化粧落として ベランダの窓を少し開けて ベッドに寄りかかる バッグからタバコを取って 火を付ける… 疲れているせいなのか いつもより酔ってる… 開けた窓の方へ流れていく 煙を眺め 「疲れた…」と 溜め息混じりで呟いていた。 あ、山岸さんからのプレゼント… 小さな紙袋… リボンとか 何も目立った飾りもない ただのシンプルな紙袋… 気を使わないように 考えてくれたのかな… …山岸さんらしい… 袋を開けて中を覗く… ん?これは? 薔薇を形をしたキーホルダー 革で作ってある薔薇だ… …カードも入ってる… メッセージカードには 〈車のキーに付けておくと 紛失防止になると思います。 好きな歌がRoseと言っていたので 薔薇を作りました〉 と、綺麗な字で書いてあった。 …作ってくれたんだ… そういえば趣味で レザークラフトを作ってるって 聞いたことがある… …嬉しい。 こんなプレゼント 今まで貰ったことない… テーブルに置いてあったキーを取り キーホルダーを付け 暫く眺め… 好きな歌を口ずさんだ… ふと… カラカラ…と隣から 窓が開く音がした… 一時期毎日のように お隣の窓が開く音がしたんだけど いつの間にか開く事はなくなっていた それが少し寂しい感じもしたけど… 私はそのまま小さな声で 歌を歌い… 山岸さんの事を考えていた… 山岸さんはとてもいい人だ… 話していてとても安心する 仕事柄、距離感を考え 警戒しながら接する事が多いから 山岸さんとの時間は 私にとって癒やしの時間… きっと山岸さんは 誰に対しても優しくて いい人なんだろう… とても人気があるし 指名も多い運転手だ… 毎日じゃないけど 帰りはほぼ送ってもらっている きっと無理させている… …ダメだ… 私は山岸さんの優しさに 甘えてる… 歌い終わって 暫くぼーっとしていた お隣の窓が カラカラと閉まる音で 我に返り、ベッドに入った …明日お礼しないと…
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