誕生日

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ずっと俯いたままだ… 肩にも力が入ってるのがわかる… 何があったのか気になる… 聞いてもいいのだろうか… ……いや、 落ち着くまで待とう… 俺はいつもと同じ様に話し始めた 返事はなかったが 凛さんが少しでも落ち着くように… そうしているうちに 緊張が和らいだのか 凛さんがやっと言葉を発した 「…これ、ありがと」 バッグから車のキーを出した。 俺がプレゼントした 薔薇のモチーフが揺れている 「あっ、付けてくれたんだ。よかった」 「…嬉しかった。大事にするね」 「なんか照れるな…」 フフフと凛さんはふんわり笑った。 それから凛さんは窓の外に視線を移し 暫くの間流れていく景色を見ていた。 「凛さん結構歌ってたみたいだけど、 喉大丈夫?」 凛さんの肩が微かにピクッと動いた。 「…大丈夫。」 「歌聞きに来る人多いんだね。 改めて歌姫なんだって実感したよ」 「……山岸さんは私の歌、どう思う?」 凛さんは窓の外をから 視線を動かさないまま 「俺もファンの一人だから、 好きですよ。 不思議な歌声で心地いい」 「……そう言ってくれる人、沢山いる。 …そうだよね。これで… いいんだよね…」 「凛さん?」 その言葉が気になったが 凛さんはそれからずっと 黙ったままだった。 緊張が解けて安心したのか それとも酔いが回ったのか 家に着く頃には 深く眠り込んでしまっていた。
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