誕生日

8/8
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
「凛さん、凛さん…家に着いたよ」 声を掛けたが…起きない。 何回か声を掛けたが…起きなかった。 …触れてもいいだろうか… 今まで起こす時も声を掛けるだけで 直接触れたりはしなかった。 なんだか俺の中では 触れたらいけない存在 みたいになっていたから… 俺は意を決して… そっと肩に触れて軽く揺すった。 「凛さん。着いたよ。起きて。」 「……ん…?…ん、 あ…ごめんな…さい…寝てた…」 不意に顔を上げた 凛さんとの距離が近すぎて 思わず口元に目をやってしまったが 急いで視線をそらした。 …何やってんだ…俺は… 「家に着いたよ。お疲れ様。 凛さんの車、置きっぱなしだから、 明日の昼頃迎えにくるね。 駐車場まで送るよ」 「そんな…一人で取りに行くから大丈夫」 「俺が勝手に 自分の車に乗せてきちゃったから、 それくらいはさせて」 「…じゃあ、お願いします」 凛さんはちょこんと頭を下げた。 俺は車を降りて、助手席にまわり ドアを開けた。 「ありがとう。おやすみなさい」 いつもよりフラついている後ろ姿を見送った。 そしていつもと違う 凛さんがとても気になっていた…
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!