想いを秘めて

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想いを秘めて

「鍵取りに行ったとき、 ちょうど歌ってたね。 カーペンターズの… 題名わからないけど。よく歌うの?」 「あのお客さんには来るたび 歌ってって言われる。 好きだからいいんだけどね…」 「そうなんだ。俺も洋楽好きだし 色々聞くけど。 1番好きな曲ってある?」 凛さんは暫く考えて答えた。 「誰の曲でもいいの?」 「いいけど、知らなかったらごめんね」 「…The Rose… ベットミドラーの…知ってる?」 「んー、どんな曲?」 「え?歌うの? じゃあ拝聴料頂きまーす」 凛さんは笑いながら言う。 「えぇー。じゃあ今度ボトル入れるよ」 休みは凛さんの店に 行ったりするようになった。 …高級店だからそれなりにお高い だから時々しか行けない… っていうかあまり行けない… その時は送れないけど… まぁそれは仕方ない… 「…冗談だよ。入れなくていいから」 凛さんニコニコしてる。 なんだか今日は機嫌がいいらしい。 隣から歌が聴こえてきた… あぁ、この曲は知ってる… 「こんな曲なんだけど知ってる?」 「知ってる。昔の曲だよね」 「歌詞が好きなの。曲もシンプルだし」 「どういう意味の歌詞なの?」 「…それは自分で調べてね」 そう言って凛さんは歌い始めた… マイクを通さずに聴こえてくる 凛さんの声は、少し掠れていて でも、いつまでも聴いていたい 不思議な声だった。 「ありがとう。なんだか癒やされたよ」 凛さんにお礼を言った。 歌い終えた凛さんは ボソボソと独り言を言っていた 「いつもは家で歌うんだけどな…」 …独り言、しっかり聞こえてるよ… それから凛さんは 俺がリクエストした曲を 車の中で歌ってくれるようになった… それだけで嬉しかった… 特別な感じがして、 とても嬉しかった…
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