あと、1ヶ月だから。

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彼女がもう1ヶ月耐えると決めたことで、 さっき言った 『4日経つか、治るまで、ずっとここにいる』 という約束は守れなくなった。 せめてもと、無理を言って彼女の横の病室を開けてもらい、何かあったら対応できるようそこで生活することにした。 毎日、朝起きて彼女の部屋へ行き、彼女の様子を見ながら朝食を()る。 講義が終わるなり彼女の部屋へとんぼ返りし、持ってきたノートパソコンと資料で最低限の研究だけは続ける。 1分が1時間に、1時間が1日に、1日が1年にも思える毎日が続く中で、彼女の容体は刻々と悪化していった。 顔色がどんどん悪くなり、口数が減り、食欲もなくなり、苦痛指数は幾何級数的に跳ね上がっていく。 彼女の方が何倍も辛いのは分かっていても、こんなに辛そうにしている彼女に何もしてやれない自分に気が狂いそうだった。 ある日、講義から帰ってくると、彼女は歯を食いしばって、泣きながら痛みに耐えていた。 痛みは大きくなったり小さくなったりを繰り返すようで、大きなヤマが来ているのだと、一目でわかった。 あまりの痛ましさに、思わず聞いてしまった。 「リーダーに頼んで、モルヒネ出してもらおう。もうとっくに仮説なんて崩壊してるんだ」 彼女は、ビクッと肩を震わせた後、涙の滲む目で俺をキッと睨みつけた。
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