7人が本棚に入れています
本棚に追加
「私を侮辱するんですか? モルヒネ貰ったら、私が実験台になった意味はどこへ行くんですか? 1ヶ月で治るとか、そんなのもう関係ない。私が唯一のデータ収集源なんです。私が狂わないうちは、絶対にモルヒネは使いません」
涙声で、噛み付くようにそう言った彼女の言葉は、俺を後悔させるには充分すぎた。
彼女が耐えていられるのは、自分が人の役に立てていると思えるからだ。
喩えそれがあの研究所のバカどもであっても。
そんな責任感の塊である彼女に、責任を捨てろと言った俺は、だから彼女に本当にひどいことを言ってしまったのだろう。
「ごめん……頭冷やしてくる」
いたたまれなくなって、立ち上がる。
俺は、なんて卑怯なんだろう。
逃げるように病室を出、ラウンジに早足で向かう。
隅の目立たない、硬めのソファに崩れるように座り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!