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彼女の部屋の前にたどり着き、もう一度深く深呼吸する。
大丈夫、ちゃんと話せば、きっと分かってくれる。
ノックをするために手を持ち上げ――――――
ガタンッ!! ドサドサッ
何かが落ちる音、そして崩れるような音。
ベッドの横に積んであった参考文献が荷崩れしたのかもしれない。
そんな緊張感の薄いことを、そのときはまだ考えていた。
荷崩れしたのなら、ノックするより先に入って片付けるべきだろう。
そう考えて、ドアを開ける。
結論から言って、確かに参考文献のタワーは崩れ、ベッド周りの床に散乱していた。
――――床に倒れている彼女を下敷きにして。
「ッおい! 大丈夫か⁉︎」
あわてて駆け寄り、彼女の上にある本をどける。
抱き起こした彼女は、完全に脱力した身体を俺に預けたまま、返事どころか身じろぎひとつしなかった。
火傷しそうなほど熱い身体の中で、顔だけが異常なほど青ざめている。
「っ…………‼︎」
非常事態にエラーを起こした脳味噌はまともな判断を期待できる状況じゃない。
半ば自失状態で、俺はただナースコールのボタンを押すことしかできなかった。
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