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彼女の容態はどうだろうか。
集中治療室――とは名ばかりの、ただセンサーとモニターが充実しているだけの部屋で、管まみれになって眠っている彼女。
できることなら、今すぐ椅子を蹴り飛ばして彼女の様子を見に行きたかった。
とは言え、実際にそんなことをしでかしたらプロジェクトから降ろされるどころか退学にすらなりかねない。
ここで、何を発言できるわけでもなく、ただ座っているだけの自分がひどくもどかしい。
本当に椅子蹴り飛ばして、彼女の病室に駆け込んでやろうか。
そんなことを考え始めた矢先、議論に飲まれて口出しできていなかった司会進行役がようやく口を挟んだ。
「あのっ! これ以上は通常業務に差し障りますので、現時点での要点をまとめさせて頂きたいのですがっ」
もともと声が大きいほうではないのだろう、必死に張り上げているのがわかる声はお世辞にも大きいとは言えなかった。
しかし、泥沼と化していた議論――その実情はもはや口喧嘩に近い――を一区切りさせるにはちょうどよかったようだ。
両サイドからの声が止んだ。
「それでは現時点でのまとめをさせていただきます。モルヒネかそれに準ずる痛み止めを処方すべきという意見と、他の患者のためにこのままデータを取り続けるべきという意見が主な2つでよろしいでしょうか?」
無言で首肯する会議室の面々をぐるりと見渡した司会進行役が、一瞬俺の上で目線を止めたように見えたのは気のせいだろうか。
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