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「大丈夫ですよ。私は自分で選んだんです。誰かに強要されて実験台になったんじゃない。だから、耐えられます。大丈夫です」
わしゃわしゃと、彼女が俺の髪をかき回す。
これじゃ、どっちが先輩か分からない。
「ほら先輩、どっちが年上か分かりませんよ? 泣き止んでください」
「年は同じだ」
屁理屈というか、ものすごく子供っぽいことを言ってしまった気がする。
気恥ずかしさに頰を赤らめると、思ったとおり彼女はぷっと吹き出した。
「まぁ、確かに年は同じですけど。立場は先輩が上ですよ。先輩、4年生でしょう?」
あくまで俺を目上扱いしたがる彼女に、いつ言おうかと思っていた、とっておきのことを言ってやることにした。
「学年だって、もう同じだ」
え、と戸惑う様子の彼女に続ける。
「さっき、資料を取りに行った時に教授がプロジェクトリーダーに抗議してたんだ。
『彼女は女子では最年少の4年生になれるはずだったのに、あんたのところで変な研究なんてさせるから』
って」
目をパチクリさせながら俺を見つめる彼女は、不謹慎とは思うが可愛かった。
だから、と続ける。
「俺はもう先輩なんて呼ばれる立場じゃない。名前で呼んでいいし、むしろそう呼ばれた方が楽だ」
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