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俺は父さまが異世界から来た母さまと出会い、様々な困難を乗り越えて結ばれ、そして命をかけて俺を産んでくれたことを話した。
ハオランは目を輝かせたり時には潤ませたりしながら熱心に聞いていた。
そんなハオランを見て、俺の心が暖かくなる。
「あ、そうだ。父さま、中央の城から報せがきたと思うけど、街に火をつけたのもハオランだよ」
「えっ!それ言っちゃうのっ?」
「当たり前だろ。父さまに秘密は無しだ」
「え~…。あ、あのっ、決して悪気があってした訳じゃないんです!理由があって…っ!でも申し訳ありませんでした!」
額が膝につくほどに頭を下げたハオランを見て、俺はくすりと笑った。そして父さまに向き合う。
「父さま、ごめん。ハオランを牢屋から出したのは俺だ。詳しく話を聞いて、彼は悪人ではないと判断した。それに…どうやら彼は命を狙われているらしい」
「うむ…。燃えたという街はどうなった?」
「国庫からお金を出して再建する。それと街の人達は皆無事だよ」
「そうか。カエン、おまえが彼を信じて行動してることなら、俺は何も言うまい。俺もおまえを信じている」
「父さま…ありがとう」
父さまに向かって軽く頭を下げた瞬間、目眩がした。ふらりと傾いた身体を、ハオランが咄嗟に支えてくれる。
「カエン!」
「カエン!どうしたっ?」
「…大丈夫だよ。ちょっと疲れてるだけ…。父さま、部屋で休んでもいいかな」
「もちろんだ。俺の肩に掴まれ」
「いいよ…自分で歩ける」
「大丈夫なのか?後で薬を届けさせる」
「うん…ありがとう」
俺はハオランの手を外すと、ふらふらと扉へと向かう。でもすぐにハオランがついてきて、俺の肩を支えようとする。
「ハオラン…重いだろ?一人で歩けるから…」
「だめ!俺はカエンに比べたら小さいけど、カエンを支えることはできる!だから遠慮なく俺に頼って!」
「そう?」
ハオランの真剣な顔を見ていたら意地悪をしたくなった。俺は少しだけハオランに体重をかけてみる。
「うっ」と声を漏らしながらも、しっかりと俺を支える様子に、体調の悪さにどんよりと沈んでいた気持ちが軽くなる。
部屋を出る際にハオランが俺の身体ごと振り向くと、父さまに向かって丁寧に挨拶をして静かに扉を閉めた。
ハオランの態度には、育ちの良さを感じる。まあ、出会った時のぶっ飛んだ態度が出る時も多々あって、俺の中に日に日にハオランに対する興味が湧いてきている。
不思議なやつだな…と目を細めて見ていると、視線に気づいたハオランが俺を見上げた。そして目が合うなり俯いてしまう。そして長髪から少しだけ覗く耳が赤く染まっていた。
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