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久しぶりの自分の部屋だというのに、どうにも落ち着かない。ハオランのことが気になって仕方がない。
俺はベッドに寝転び右を向いたり左を向いたりしていたが、勢いよく起き上がってベッドから降りた。そしてハオランが使っていた部屋の扉を開けようと手をかけた時、激しく扉が叩かれた。
「なんだ!」
「カエン様!リオです!入りますよっ」
俺が返事をするよりも早く扉が開く。
真っ赤な顔をしたリオが息を切らしながら入ってくる。
「リオ、早かったな。すぐに俺の後を追いかけてきたのか?」
「そうです!城に戻るとだけ言われても何のことだかわかりませんからね!それに俺はあなたの世話を任されてますからね!」
「悪かったな。緊急事態だったから」
俺は傍に来たリオの肩に手を置いて力なく笑う。
リオは肩に置かれた手を見つめて大きく息を吐いた。
「ハオランの姿が見えませんが…。彼に何かあったのですか?」
「そうだよ…」
「はっ!もしや逃げた…?」
「馬鹿言うな。ハオランはそんなことしない。俺の傍を離れないと言ってくれたし」
「では…もしや消えたので?」
「…なぜそう思う」
リオの肩に置いていた手を降ろして、俺は低く聞く。
リオはようやく息が整ったらしく、落ち着いた声で俺に座るように言った。
「カエン様、どうぞおかけになって下さい。昨夜、カエン様と一緒にハオランの姿も見えなくなりました。二人で散歩にでも出掛けたか急用で中央の城に戻ったのかと思ってました。だけど朝早くにカエン様だけ戻って来ました。そして慌てて中央の城に行ってしまった。俺はカエン様の後を追いかけながら考えたんです。あなたは最近ハオランととても仲が良い。そのハオランがいなくなってアルファム様のいらっしゃる城に戻ると言う。これはもしや、ハオランは元の世界に戻ったのかもしれないと」
「リオは変な所で勘がいいよね…」
「それは褒めて下さってるのですよね?」
「そうだよ」
「ありがとうございます。カナデも昔、一度だけ元の世界に戻ったことがあります。あの時、カナデは川に落ちて俺も助けに川に飛び込みました。カナデは俺の手が触れる直前に、渦に飲まれて消えたんです」
「カナが?」
「はい…。あの時俺は、とても後悔しました。なぜカナデの手を掴めなかったのか、なぜ助けれなかったのかと…。でもアルファム様は絶対にカナデは生きてると信じてましたよ。そうしたら本当に、再び海辺の城に現れたんです」
「その話、父さまにも聞いた」
「え?そうでしたか…」
二人の話を聞いて、俺の中の焦りが少し減ってきた。ハオランも再びこの世界に戻って来る気がする。たとえどんな困難に合っていても、俺の元へ戻って来る気がする。
俺はしばらく休むからとリオを部屋から出して、ハオランが使っていた部屋に入った。
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