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「カエン様、少し休憩しませんか。朝から動き回ってオルタナも疲れてますよ」
「そうだな…」
リオに声をかけられオルタナの足を止める。
俺はオルタナから降りると、近くを流れる川へ行きオルタナに水を飲ませた。
リオも馬に水を飲ませて、岩に腰を下ろした俺の隣に来る。そして肩にかけていた鞄から細長い容器を取り出した。
「どうぞ。泉の水です。疲れが取れて気持ちが落ち着きますよ」
「うん、ありがとう」
リオから容器を受け取り蓋を開けて一口飲む。
泉の水は冷たくてほんのり甘くて美味しい。泉の中に身体を浸せば傷も癒える。本当に万能でこの国の、世界の宝だと思う。
「そういえばハオランに泉のこと話してなかった。戻ってきたら話して見せてやりたい」
「そうですね。もし少しでも怪我をしていたら癒してあげてください」
「うん…でも無傷で戻って来て欲しいよ」
「カナデもそうでしたが、ハオランもあの死神みたいな男の関わりによって違う世界を行き来していたなら、こちらからは何もできません」
「わかってる…」
リオがもう一つの容器を取り出して水を飲む。そして俺の前に膝を着きにこりと笑った。
「でも俺は、必ずハオランは戻ってくるような気がしてます。それでですね、怒らないで下さいよ?ハオランを捜すついでと言ったら失礼ですが、ハオランの石を探しませんか?」
「ハオランの石?」
「はい!カナデはアルファム様の赤い石をもらって肌身離さず持ってましたが、アルファム様は『カナの石も見つけてやればよかった』と後悔してらっしゃいまして…。ですからカエン様はハオランに合う石を探して戻って来た時にそれを渡して求婚されたらいいと思います!」
「求婚…って…ええっ!」
「あれ?知られてないと思ってました?俺は洞察力が鋭いんです。カエン様とハオランが想い合ってることはわかってますよ」
自信たっぷりのリオの顔が何だか腹立つ。まあ別にバレててもいいけど。ハオランが戻って来たら俺の想いを告げるつもりだし。
俺はペンダントにしてシャツの中にしまってある石にシャツの上から触れながら言う。
「父さまみたいに俺の石をあげてもいいけど」
「あの美しい黒い石をですか?駄目ですよ。あの石は世界のどこを探しても二度と見つかりません。カエン様が生まれたから世に現れた貴重な黒石です」
「ふーん。じゃあハオランにはどんな石がいいんだろう」
「俺の石は親から受け継いだ物なのでよくわかりませんが、ぴったりの石を見つけたらピン!と来るものらしいですよ?」
「よく…わからない」
リオの説明がよくわからない。ピンと来るってなに?運命みたいなもの?ハオランと出会った時のような衝撃を感じるのか?
「わかった。石も探してみるよ」
俺は立ち上がって背伸びをすると、オルタナにここにいるように告げて森の中に入った。
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